【事後レポート③】さめたく塾 「観光心理学から若者の海外旅行を読み解く」

さめたく塾Vol.3(2018年9月14日)は中村哲玉川大学教授をゲストに「観光心理学から若者の海外旅行を読み解く」をテーマに盛況に終わりました。「なぜ人は旅をするのか」というわかっていそうで実はわかっていない本質的な問いから、ツーリズムの3要素(カネ・ヒマ・モチベーション)のひとつであるモチベーションの背景にある要因や理論を観光心理学の視点から説明しつつ、最近の若者の海外旅行は出国率で見れば過去最高を記録している事実、一方で若者の海外旅行離れでなく、実は若者が旅行会社から離れている事実を浮き彫りにした刺激的な議論になりました!

心理的な側面から旅行のカスタマージャーニーである旅前から旅後までの一連のプロセスを紐解いていくと、いろんなことがわかってきます。

旅前のモチベーションに働きかける心理的なプッシュ要因とプル要因。プッシュ要因の中には、解放感にような逃避型と緊張感のような追求型があること、また最適覚醒理論という人間のもつ快適な覚醒レベルを維持するために求める欲求が変わってくる考え方など観光心理学の基礎的な理論を紹介しました。

最近のインスタ映えをする写真を撮るために旅行動機が発生する要因や、また実は旅行中よりも旅前の方がドーパミン(意欲に関わる神経伝達物質)の分泌が最大化する研究仮説の紹介など、新なた知見もあって参加者も観光心理学という未知の領域から、新たなツーリズムの見方、考え方を学んでん頂けたと思います。

活発な議論をするのがこの塾の特徴なのですが、旅慣れた方が多い参加者層ということもありますが、個人の旅行では海外旅行で旅行会社を使っていない参加者が9割いたことや、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)や直販と旅行会社を使い分けしているいう最近の旅行の消費行動も浮き彫りになりました。偶然にも、参加者にも多くの旅行会社の方もいたので「なぜ旅行会社を使わないのか?」との議論も敢えて切り込み、参加者同士でも議論をしました。


今回に観光心理学とこのテーマを選んだ理由は、消費者インサイト(暗黙の欲求認識)を浮き彫りにしなければ、現在の旅行会社のマーケティングは不毛に終わるのではないかという問題意識があるからです。今回のテーマでもある「なぜ旅をするのか?」という問いに明確に答えられる人は実はあまりいません。つまり、顧客は顧客自身の本当の欲求を理解していないということです。その意味では、顧客に「何が欲しいですか?」と聞いてその通りにつくるのは愚行と言えます。消費者のインサイトを引き出し、そこに踏み込んだマーケティング活動こそが、今の旅行会社に最も欠けた課題だと思うのです。

旅行会社の方々と議論をしていると、「なぜ若者は旅行をしないのか?」という問いにしばしばカネがない、時間がないということで片づけられることが多いように思います。しかし、人間はカネと時間があれば、旅行をしてくれるということにはなりません。旅行のモチベーションに踏み込んだマーケティングこそ、新たな需要創造のきっかけがあるように思います。その課題解決のために、観光心理学はひとつの処方箋を提供してくれます。その意味では、意義あるテーマ設定だと思っています。


さめたく塾は、講座の終了後に参加者同士の懇親会も用意しています。様々な人が集い、交流する場としているのは、お互いに学び合うことこそ新しい知識を生み出すと信じているからです。年齢や立場を超えて旅するようにこの塾を続けていきたいと思います。

(以上)



SAMETAKU-LAB 鮫島卓観光デザイン研究室

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