歩いてわかった世界と日本 ②「絶景を生み出した地球の奇跡」

「絶景を生み出した地球の奇跡」

絶景「ウユニ塩湖」の魔力

「世界中を旅して、どこが最も良かったですか?」世界65ヶ国を旅してきたので、前職の旅行会社時代も、教員となった現在でもしばしば訊かれる質問のひとつです。それに対して、「すべての体験が唯一無二で、比べようがないくらいどれも素晴らしい」というのが率直な意見です。しかし、中には涙するほど感動した場所がいくつかあります。今回はそのひとつである「ウユニ塩湖」の旅を紹介します。

ウユニ塩湖は、南米大陸を走るアンデス山脈に囲まれた広大な塩湖で、ボリビアの西部に位置します。例年、夏にあたる12月~3月の雨季にだけ、薄い水が張り広大な湖となります。それ以外の季節は、真っ白な塩の大地です。日本でウユニ塩湖を有名にしたのは、ビートたけしさんが出演したポカリスエットのCMであると言ってよいでしょう。空と地上が鏡のように見える上下対称の風景は、まさに「絶景」というに等しく、多くの観光客を魅了しています。


この「鏡張り」に見える絶景を臨むには、まず12月~3月の雨季を選ぶ必要があります。また、雨季の水が張った時期であっても、無風であることが「鏡張り」に見える条件です。風が強いと湖面が波打ち、美しい鏡にはなりません。

私が訪れたときは運よく好天と無風に恵まれ、例えようのない絶景を目にすることができました。様々な「トリック写真」を撮ることもウユニ塩湖の楽しみ方です。ひとり旅の私はガイドとSUV車のドライバーを雇い、湖面のドライブと写真撮影を楽しみました。昼間の絶景にもまして感動したのは夕暮れと夜の光景でした。ふたつの夕日がやがて重なり合って日没を迎え、天の川はもちろん南十字星や日本では決して見ることができない小さな星々が姿を現します。天空と湖面にきらきら輝く空間の中で、感動のあまり涙が出てきたのを今でも覚えています。絶景を肴にして、湖面でのアウトドアバータイムは忘れられないぜいたくな時間となりました!


ユニークな塩のホテル

以前、ウユニ塩湖へは首都ラパスからバスで約12時間かかりました。現在はアマゾナス航空を利用して、わずか1時間ほどのフライトで到着します。塩湖というだけあって、塩で建てられた「塩のホテル」に宿泊しながら、日中は湖面をSUV車でドライブするのが一般的な楽しみ方です。建物の壁もベッドも本当に塩で造られたホテルは、世界中見渡してもウユニだけのユニークなホテルと言ってよいでしょう。


地球が生んだ奇跡の地形

ところで、私たちに絶景を楽しませてくれるウユニ塩湖は、どのようにして誕生したのでしょうか。ウユニ塩湖が塩で覆われているのは、地球の長い歴史と関係しています。

ウユニ塩湖は、アンデス山脈に囲まれた約3700mの高地にあり、富士山と同程度の標高です。しかし大地を覆う塩が存在する理由は、太古の昔、ウユニが海だったことにあります。ウユニは、地球の地殻変動によって誕生したアンデス山脈と共に現在の標高になるまで隆起したと言われています。また、ウユニ塩湖の面積は、南北約100km、東西に約250kmの約11000㎢もあり、岐阜県と同じくらいの広大な平地です。傾きのない平地でなければ、薄水がまんべんなく一面に張ることはありません。さらにウユニ塩湖には水が流出する河川がありません。従って、周辺地域の乾燥地帯に水が吸収されることもなく、少ない水量でも一定量の水がたまり、湖となることができるのです。


このようなウユニ塩湖の地形の成り立ちをガイドから教わった私は、河川がない証拠を突き止めるためにガイドにお願いして、湖の縁と水源である湧水を示す場所へ案内してもらいました。河川ではなく、アンデス山脈の雪解け水と雨季の降雨による伏流水が、塩の大地に潤いを与えてくれているのは事実のようです。

「アンデス山脈は、今も隆起し続けています。ですから、ウユニ塩湖の地形は徐々に変わり、この絶景はいずれ見ることができなくなるのです。」というガイドの言葉に、私は「地球は生きている」ことを実感するとともに、今の時代に生まれたこと、地球が生み出してくれた奇跡の瞬間に立ち会えたことに心から感謝しました。


観光地理を学ぶ意味

ウユニ塩湖に限らず、世界には私たちを楽しませてくれる数多くの絶景が存在します。それらの絶景の価値は、目に見える景色を楽しむだけではなく、その背景や成り立ちを学ぶことで倍増すると言ってよいでしょう。「観光地理」を学ぶ意味は、まさにここにあります。世界中の自然資源は、地球が生み出してくれた贈り物です。観光客を楽しませるその絶景が生まれた背景を学ぶことで、目前の「今」の絶景だけでなく、目には見えない「過去」と「未来」が重なる新たな絶景を見ることができるのです。観光資源の「名称」を覚えるだけでなく、どのようにして誕生したのかについてその変容を探求することは、地球に感謝し、未来の地球を考えることにもつながるのではないでしょうか。
(以上)

SAMETAKU-LAB 鮫島卓観光デザイン研究室

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