コロナ禍の観光地とは

いよいよ大学も新学期がスタートした。担当している「観光政策論」の履修学生90名に夏休み期間中に旅行をしたのか調査した。結果は「1泊以上の旅行をした」が44.1%、「日帰り旅行をした」17.6%、「旅行をしなかった」47.1%となり、旅行をしたと答えた学生が過半数を超えた。皆さんはこの数字をどう思うだろうか。マスコミの報道だけを信じている人にとっては意外な数字かもしれないが、8月末から9月前半約2週間かけて各観光地を調査した実感値とほぼ近い結果だった。

軽井沢や熱海など都心に近い観光地では、若者と小さな子供のいる家族の旅行者が目立った。意外だったのは高齢者と思われる人々も目にした。航空機や新幹線利用者は少ない。羽田空港では国際線の欠航だらけの案内板が象徴である(メインビジュルアルの写真)。旅行者の大部分が車利用。中には首都圏からレンタカーを借りていることもわかった。軽井沢のアウトレットは普段のディズニーリゾートくらい駐車場が埋め尽くされていた。(下記写真)ことの良し悪しはさておき、我慢の限界もそろそろという感じなのだろうか。やはり旅をしたい人は一定数いることは確かである。この9月4連休で多くの人びとが出かけているようだ。海外の事例通りいけば、感染者が増えるだろう。当面は自粛と外出の波を繰り返しながら、柳のようにしたたかに対応していくしかなさそうだ。各自が手洗いとマスク、ソーシャルディスタンスを意識して感染に気を付けながら出かけてほしい。



また世界遺産を名乗る観光地では、例年であれば海外旅行をしているというひとり旅の旅行者に多く出会った。こうした現象はコロナ禍ならではであろう。一方で気になるのは、インバウンド主流の観光地。閑古鳥が鳴くほど厳しい。野沢温泉の外湯は貸切状態だし、大分県の由布院の2年前に新たにできた宿では、コロナ前に9割のインバウンド客がゼロに。まさに天国から地獄。従業員全員が外国人ということもあり、先が見通せない中では戦略の転換は必至だと言っていた。


コロナ過における観光産業は「コロナ格差」が生じていると言ってよい。コロナ禍は全面敗訴ではない。軽井沢の宿泊施設や飲食店でヒアリングをすると、緊急事態宣言解除後の6月からかなり賑わっていたという。週末は満室の宿泊施設も多い。GoToキャンペーンという観光産業支援策は、結局ブランド力のあるところを潤すであって、全体の底上げではないことは確かである。むしろ競争が激しくなっていると考えてよい。しかし、ものは考えようだ。もともとやろうとしていたことをこの機会にやってみる、できた貴重な暇を次の成長につなげる挑戦こそが問われていよう。危機こそチャンスである。


「旅行をしなかった」学生の理由には、高齢の同居人への影響から旅行を躊躇する姿勢などが見られ、旅行をしたいという意欲がないわけではないようだ。よく考えれば人間が出かけたいという欲求は自由の象徴のようなものだ。犯罪を犯したときに収監されるのは、出かける自由を制限する行為である。それくらい重たい判断の上で規制は行われるべきである。


メルケル首相がコロナ禍の4月において国民に向けたメッセージが最も説得力がある。

「旅行と移動の自由が苦労して勝ち取った権利であることを実感している私のような者にとって、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。民主主義社会において決して軽々しく決められるべきではなく、一時的にしか許されません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです。」


人びとが旅をしようとする意欲がなくなるわけではない。江戸時代の旅がお参りを建前として本音では物見遊山であったという日本人特有の心理構造をふまえれば、コロナ除けのためのお参りの旅が復活するかもしれないと思うのは考えすぎだろうか。

(以上)

SAMETAKU-LAB 鮫島卓観光デザイン研究室

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